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介護現場を楽しく!いきいきリーダー養成講座 (連載第4回)、研修を生かしてチームをつくろう!、平成24年11月

介護現場を楽しく!いきいきリーダー養成講座 (連載第4回)、研修を生かしてチームをつくろう!、平成24年11月
 4回にわたって連載してきた「介護現場を楽しく!いきいきリーダー養成講座」も、とうとう最終回になりました。第1回は「今日から出来る“自己覚知”」と題して、周囲や過去にとらわれるのではなく、自分と未来に焦点を合わせて行動していくことの重要性について解説しました1)。第2回は「リーダーこそ“魅力”を語ろう!」と題して、リーダー自身が介護の仕事の魅力を感じ、それを周囲の職員にも伝えていくことの大切さと、その実践方法を述べました2)。第3回は「良好な人間関係を作ろう!」と題して、職場の人間関係を良好にするための具体的な方法を紹介しました3)。そして今回は、この連載の総まとめとして「研修を活かしてチームを作ろう!」というテーマにしました。スタッフが興味をもって参加出来る研修や、効果を実感出来る研修の実践方法と、それを活かしてよりよいチームを作っていく方法について考えてみたいと思います。

 そもそも研修は事業所全体に関わるものですから、介護現場のリーダー一人で計画を進めていくようなものではありません。しかし、「他人まかせ」にするのではなく、「このような目的から、このような研修計画を考えている」と提案することは、非常に重要なことです。なぜならば、このような提案こそ、第一回目の連載に書いた「自分と未来に焦点を合わせた行動」だからです。そして、研修がうまく機能すれば、スタッフ間の会話が「次回の研修ではこんなことを…」といった、プラスの話題になっていきます。「今日も人が足りない」、「休みが取れない」といったマイナスの話題ではなく、このようなプラスの話題にもっていくことがチーム作りのポイントです。これこそ、第二回目の連載に書いた「リーダーこそ“魅力”を語ろう!」の本質であり、第三回目の連載に書いた「良好な人間関係を作ろう!」の実践方法となります。

 さて、読者の皆様は、研修と聞いた時にどんな学び方を思い浮かべますか。一言で研修と言っても、その方法や内容は実に様々です。例えば、外部から呼んだ講師の話を聞くような研修もあれば、職場のスタッフが講師になるような研修もあるでしょう。あるいは、座学ではなく、移乗介助などの実技を行う研修も考えられます。このように、研修のスタイルは何通りもありますが、それらに共通する重要なポイントがいくつかあります。まずは、そのことについて解説したいと思います。
 第一に、「本当は出たくないけど、仕方がないから参加する」というような研修では、あまり効果は期待出来ません。「そんなことは当たり前だ」と思う方も多いかもしれませんが、残念ながら、このような研修を行っている事業所が少なからずあるという現実もあります。かと言って、みんなが参加したいと思うような、人気のある有名講師を何度も繰り返し呼ぶというのは、経費の面からも現実的ではありません。では、どのように考えたら良いでしょうか。

私は、研修には、大勢が集まって行うような、いわゆる「施設レベル」の研修もあれば、個々に学習する「個人レベル」の研修もあると考えています。さらに、その中間に位置する、ユニット単位やフロア単位での、「チームレベル」の研修も存在すると考えています。これらを適切に組み合わせることにより、単調ではなく変化のある研修計画を立てることが可能になり、その結果、参加者に主体性が生まれてくるものと思います。

 第二に、「やりっぱなし」の研修も、効果が小さいと言えます。単発の研修で見聞きした程度のことは、よほどインパクトのあることでない限り、数か月も経てば忘れてしまいます。「やりっぱなし」の研修にしないためには、連動性を持たせた年間の研修計画を立てることと、その年間研修計画の中に「振り返り」を位置づけておくことが重要です。
 第三に、「大勢の中の一人」という立場で参加する研修ばかりでは、これもまた効果が薄くなります。「いつも主役」という訳にはいかないまでも、時には、自分の考えを述べたり、あるいは自分が前面に出るような場面がないと、「常に受け身」になってしまい、研修に対する関心が薄くなってしまいます。

 この問題に対しては、インプット型の学びとアウトプット型の学びを組み合わせることで対応可能です。インプット型とは、本を読んだり、講義を聞いたりして知識を入れていく方法で、個々の職員が知識や技術を取り入れていくタイプの学び方です。一般的に行われている多くの研修はこのスタイルで、私たちが小学校や中学校で経験してきた、教室で先生の授業を聞くという学習スタイルは、典型的なインプット型です。一方、アウトプット型とは、自分の意見を話したり、記述したり、あるいは他者に教えるタイプの学び方で、個人の中にある知識や経験を外部に発信していく方法です。何も、大勢の前で発表することだけがアウトプット型学習ではありません。自分の思いを記述することもアウトプット型学習であり、適度にこのスタイルを用いることにより、研修参加者が極端に受け身になることを防ぐことが出来ます。

 ここからは、具体的な研修計画の例を示しながら解説していきたいと思います。繰り返しになる部分もありますが、研修計画を立てる際のポイントを整理しておきます。

① スタッフが主体的に参加できる研修内容にする。
⇒「施設レベル」、「チームレベル」、「個人レベル」の研修を組み合わせる。
⇒「インプット型」と「アウトプット型」の研修を組み合わせる。

表1 インプット型研修とアウトプット型研修の例(筆者作成)※画像参照

② 「やりっぱなし」の研修にならないようにする。
⇒年間計画を立てる際に「振り返り」を位置づける。
⇒あれもこれもと欲張らずに、「年間テーマ」を決めて、そのテーマに沿って年間計画を立てる。

 今回は、移乗介助や食事介助などの「介護技術」をテーマにした研修計画を例に考えてみたいと思います。まずは、「介護技術」に関して、インプット型研修とアウトプット型研修を、個人レベル、チームレベル、施設レベルという階層に分けて整理してみます。

 表1で示した内容はあくまで一例ですが、効果的な研修を組織として行うためには、これらの要素を組み合わせて年間の研修計画を立てることが重要になります。年間研修計画を立てる際には、先に述べた通り「振り返り」を意識することが重要です。個人で学習して疑問に思ったことや気付いたことは、チームレベルの研修で解決したり伝達したりすることにより、振り返ることが可能です。チームで学んだことは、外部講師を招いての施設レベルでの研修や、年度の最後に行なう、研修リーダーや副リーダーによる「振り返りの講演」で、文字通り振り返ることが出来ます。

 加えて、研修開催日時の設定にも多少の工夫が必要です。入所型の介護現場では変則勤務が多いために、「勤務の都合で研修に参加出来ない」という職員が出てきてしまうからです。そこで、例えばユニットやフロアごとの「チームレベル」の研修を別日程で設定します。これにより、自分のチームの研修に参加出来なかった職員が、別のチームの研修に参加することが可能になります。

① 5月(施設レベル)全体研修(施設長、研修リーダーによる講演)
(なぜ介護技術を学ぶのかについて共通認識をもつ)

② 7月(チームレベル)具体的な進め方の確認
(専門書や視聴教材などの情報提供、疑問や課題などの抽出方法の説明)

③ 7月~通年(個人レベル)個人の学びと課題の明確化
専門書を読む、DVDなどを視聴する、疑問・課題・気付きを書きだす

④ 9月(チームレベル)疑問の解消、知識と技術の確認と習得①
(個別に書き出した項目についての議論、個別に習得した技術の伝達)

⑤ 11月(チームレベル)疑問の解消、知識と技術の確認と習得②
(講師役を変えて、個別に書き出した項目についての議論、個別に習得した技術の伝達)

⑥ 2月(施設レベル)外部から講師を招いての勉強会

⑦ 3月(施設レベル)全体研修(研修リーダー・チームリーダーによる振り返り講演)
(1年間の学びを振り返り、成果と課題のプレゼンテーション)

 ここからは、研修の中身について、もう少し具体的に説明します。

① 5月(施設レベル)全体研修(施設長、研修リーダーによる講演)
 年間を通して行う研修のテーマが決まったら、年度初めに全体研修を行い、「このテーマで学ぶ意義」や「施設としての方針」について共通認識をもつことが重要です。個々の職員は様々な価値観をもっているので、「施設としての方向性」を明確にしておくことが、チーム作りの観点からも重要です。

② 7月(チームレベル)具体的な進め方の確認
 次に、フロアやユニットの「チームレベル」で、具体的な学び方について確認します。これまで述べてきたように、「個人レベル」、「チームレベル」、「施設レベル」という階層があることや、「インプット型研修」と「アウトプット型研修」があることを説明します。さらに、それぞれの具体的な進め方についても明確に示します。個人レベルでの学びに活用する、専門書や視覚教材の使い方、疑問点や学んだことをメモにとっておくことなどを伝達します。

 チームごとに開催日程をずらし、勤務の都合で参加出来なかった職員は、別のチームの回に参加し、具体的な進め方を理解出来るような配慮も必要です。

③ 7月~通年(個人レベル)個人の学びと課題の明確化
 変則勤務が多い上に多忙な介護職員は、まとまった時間をとって学ぶことが難しい環境といえます。そこで効果的に活用したいのが、この「個人レベル」での学びです。休憩室や仮眠室、職員食堂など、日頃から目に触れやすい場所に、実践的な専門書や視覚教材を配置し、休憩時間などを有効活用しながら自由に学べる環境を整えます。
 ここで重要なのは、「本を読んで終わり」、「DVDを観て終わり」にせずに、きちんとメモをとっておくことです。個々のノートに記録する方法もありますし、1冊のノートに皆が書き込んでいく方法もありでしょう。パソコン環境が整っている事業所ならば、電子データとして記録しておくのも有効です。

④ 9月(チームレベル)疑問の解消、知識と技術の確認と習得①
 個人レベルで学んできたことの振り返りの場として、年度半ばにチームレベルの研修を設定します。発表者にとってはアウトプットの場、発表者以外の参加者にとってはインプットの場となります。フロアやユニットレベルの人数ですので、自由な雰囲気で積極的に議論したり、実技の確認をすることが出来ます。

⑤ 11月(チームレベル)疑問の解消、知識と技術の確認と習得②
 チームレベルの研修は、別日程でも開催することが有効です。前回とは発表者を変えることで、別の職員にとってのアウトプットの場になると同時に、勤務の都合などで自分が所属するチームの研修に参加出来なかった職員が参加出来る場にもなるからです。

⑥ 2月(施設レベル)外部から講師を招いての勉強会
 これは予算の都合もあるでしょうから、「可能であれば開催する」程度の位置づけでも良いかもしれません。外部講師を招いて新しい価値観を身に付けたり、これまでの研修についてコメントをもらうことは、職員全体のモチベーションを上げる効果が期待できます。

⑦ 3月(施設レベル)全体研修(研修リーダー・チームリーダーによる振り返り講演)
 年度の終わりに、「年間研修の振り返り」を全体で行います。研修全体のリーダーや、フロアやユニットのリーダーが、年間研修について振り返り、報告します。年度初めの全体研修で確認した「学ぶ意義」や「施設としての方向性」を踏まえて、成果や課題を振り返っていきます。

 今回は介護技術をテーマにした年間研修計画の例を挙げて説明しましたが、実際に研修計画を立てる際には、それぞれの事業所の実情に合わせて設定すれば良いと思います。

研修回数や内容は様々になりますが、共通するポイントは、以下のようになります。

①個人、チーム(ユニットやフロア)、施設というように、階層を意識する。
②インプット型とアウトプット型を組み合わせる。
③それぞれが連動するような研修体系を考慮する。
④振り返りながら学べるような流れを意識する。

リーダーにとって大切なことは、研修は「学びの場」であると同時に、「チーム作りの場」であることを意識することです。これまでの連載で色々なことを書いてきましたが、決して100点満点を求めるのではなく、「昨日よりも少しだけ前向きな自分」を意識すれば、きっと素敵なリーダーになれると思います。

介護現場がますます明るく魅力的になることを願って、この連載を終えたいと思います。最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

【引用文献】
1) 古川和稔:今日から出来る「自己覚知」,介護現場を楽しく!いきいきリーダー養成講座 第1回,相談援助&運営管理,2月号,p11-14,2012.
2) 古川和稔:リーダーこそ“魅力”を語ろう!,介護現場を楽しく!いきいきリーダー養成講座 第2回 相談援助&運営管理,5月号,p11-15,2012.
3) 古川和稔:良好な人間関係を作ろう! 介護現場を楽しく!いきいきリーダー養成講座 第3回,相談援助&運営管理,8月号.

(おわり)

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