前号では、ある経済学者が約100万人のデータを丹念に分析した結果、「介護職の賃金水準は、全産業の中間からやや上に位置する」と報告していることをお伝えしました。とはいっても、賃金に関して不満をもっている介護職員がいることは事実ですし、私自身も、介護職員の賃金を上昇させたいと強く思っています。
そこで、「どうすれば介護職員の賃金が上がるか」が大切な議論になってきます。「誰にでも出来る簡単な仕事」でありながら「高賃金」という“おいしい仕事”は世の中にはありませんから、世間の人々に「介護職員の仕事は専門性の高い業務だ」と認めてもらうことが大切だというところまでが前号の内容でした。
さて、唐突ですが、今年も暑い季節がやってきました。
私たちは、暑くなると汗をかきます。汗をかくと、のどが渇きます。のどが渇くと、水分を摂りたくなります。この「当たり前のこと」が、実は介護の専門性を考えるうえで、とても大切なことなのです。
人間の体重の約60%は水分(体液)で、一定の水分量を保つことは非常に大切なことです。体内の水分量が著しく減少すると脱水症になり、意識レベルが低下したり、重篤な場合は生命を失うこともあります。通常ですと、体内の水分量が低下するとのどが渇くので、水分を摂り、脱水症にはなりません。
「のどが渇く」というサインは、植木鉢の土が乾燥するように「のどが乾燥している」のではなく、体内の水分量が減っている時に感じるサインなのです。これは大変よくできているサインで、誰だって、のどが渇くと、冷たい飲み物でのどを潤わせたくなりますよね。
もし、体内の水分量が減少した時のサインが、全く別のサインだったらどうでしょう。例えば、体内の水分量が減少すると、頭がかゆくなるとか(笑)。その場合は、体内の水分量が減っていても、頭をかきつづけるだけですから、みんな脱水症になってしまいますよね(笑)。
話が脱線してしまいましたが、高齢者の場合、体内の水分量が減少していても「のどが渇く」というサインが出にくい方がいます。あるいは、のどが渇いていても、「トイレが近くなるのがイヤだから」という理由で、水分を摂りたがらない方もいらっしゃいます。
他にもいくつかの理由がありますが、いずれにしても、高齢者の場合は体内の水分量が減少しやすいと言えます。介護職員は、このことを常に意識して対象者を支援していくことが重要なのです。
介護の仕事の専門性は、優しさや思いやりだけではありません。あっ、誤解のないように言っておきますが、「介護の仕事に優しさや思いやりは必要ない」と言っているのではありません。というか、必要です(笑)。でも、それだけでは不十分だということです。
自分で歩くことが出来ない方の移動方法をお手伝いすることや、食べることが出来ない方に食事の介助をすることなど、「出来ない部分を支援する」というのは重要な介護の仕事ですが、さらに積極的な介護と言いますか、頼まれてもいないのに積極的に支援することも、場合によっては必要なのです。
その一例が、積極的に水分摂取を勧めることです。もちろん、病気などによって、主治医から水分を制限するように指示されている方を除いてですが。
私はこれまで多くの高齢者と関わってきましたが、水分摂取量を増やしたことによって元気を取り戻した方を大勢見てきました。
では、一体どのくらいの水分を摂ればよいのでしょうか。一般的には、1日1,500ml以上と言われています。500mlのペットボトル3本分ですから、「そんなに必要なの?」と思う方も多いかもしれませんね。
COLUMN
介護走り書き(連載16回目)