COLUMN

介護走り書き(連載17回目・最終回)

平成21年9月から、約2年間にわたって連載してきた「介護走り書き」ですが、今回で最終回となりました。これまでの2年間、私のつたない文章におつきあいいただき、本当に感謝しております。ありがとうございました。
 さて、この連載では、私自身の経験、介護福祉実践現場の魅力、そして課題などについてお話してきました。最終回の今回は、これまでにも何度か取り上げてきた、介護職員の離職問題について、将来への期待も込めてお話しさせていただきます。

 27歳でお笑い芸人を辞めた私が、介護福祉の世界と関わるようになってから、約15年が経過しましたが、この間に、介護福祉実践現場を取り巻く環境は大きく変化しました。
 私が初めて老人ホームに就職したのは、平成8年、28歳の時です。その4年後、平成12年に介護保険制度が始まったこともあり、当時、介護福祉士は一躍人気職種となりました。全国の介護福祉士養成校は、どこも定員いっぱいで、毎年多くの介護福祉士が地域の実践現場に就職していきました。また、実務経験3年を経て国家試験を受験する、いわゆる実務経験ルートの介護福祉士も多く誕生しました。国家資格としての介護福祉士が誕生したのが昭和62年ですから、それからの約15年間は、「介護福祉士の時代の幕開け」といった雰囲気だったのです。

 ところが、ある出来事がきっかけで、状況は一変しました。
 ご記憶の方も多いかと思いますが、平成18年に起きた、いわゆる「コムスン事件」です。この事件は、全国で介護保険事業を展開していたコムスンという会社が行っていた介護報酬の不正請求や、その後の処分逃れが、大きな社会問題になった事件です。この事件を契機に、「介護職は重労働で低賃金」、「介護職では給料が安くて、結婚も出来ない」といった報道が目につくようになりました。そして、介護福祉士を目指す若者が減少したのと同時に、現職介護職員の離職問題が大きく取り上げられるようになってきたのです。

 マスコミ報道では、「低賃金」を離職理由にしていることが多かったのですが、実際の介護現場にいた私としては、むしろ「賃金以外の離職理由」の方が大きいと感じていました。それから数年間、実際に離職を経験した方々へのインタビュー調査を行ったり、施設を対象にしたアンケート調査などを行ってきました。
 その結果、介護職員の職場定着については、この連載でも何度かご紹介した通り、職場環境と、職員自身の専門性の認識がカギだということが分かりました。つまり、「ある施設を短期間で離職した介護職員」であっても、「その後に就職した他の施設では長く働いていることが多い」というケースがたくさんあったのです。こうなってくると、離職は「個々の介護職員の問題」ではなく、「施設側にも大きな問題がある」ということになってきます。この「施設側の問題」について、様々な角度から掘り下げた結果、結局、介護職員の職場定着促進に向けては、以下の点が重要だということが分かりました。

①施設のトップは、「利用者の自立に向けた介護を行う」と、明確に意思表示すること。
②個々の介護職員が「専門職」であることを認識出来るような組織に変革していくこと。

 ポイントは、水分、食事、排泄、運動のケアをしっかりと行うこと、車椅子の方は出来るだけ普通の椅子へ、オムツの方は出来るだけトイレで排泄をというケアを施設ぐるみで徹底すること、また、改善した事例は、事例検討会を開催して、そのノウハウを職場全体で共有すること、そして、一人ひとりの介護職員に、資格や職務を明記した名刺をもたせること、などです。 
 施設長が中心になり、こういった組織の変革と自立支援介護を実践することが、実は介護職員の職場定着促進にはもっとも重要なことだったのです。
 近い将来に再び、「介護福祉士新時代の幕開け」がくることを願い、日々の教育・研究活動にまい進していきたいと思います。

(おわり)
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