前号では、「介護実践現場における“業務”とは何か」という問題提起まで書かせていただきました。おぉーっと、たった1行とはいえ、このつまらなそうな書き出しで、数十名の読者が“このコラム読むのは後回し”と思っちゃいましたね(笑)。いや~、いかんいかん。そんな難しい話しをしようとしているのではないんです。だから、ぜひ最後まで読んでください(笑)。ということで本題に…
改めまして、前号では「“業務”が忙しくて、利用者と向き合う時間がない」というセリフをよく耳にするが、この“業務”とは何を指すのかという問題提起をさせていただきました。“業務”の意味について広辞苑で調べてみますと、「事業。商売などに関して、日常継続して行う仕事。なすべきわざ。仕事」となっております。つまり、商売をするうえで日常継続して行う仕事を指すのですから、例えば料理人にとっては“おいしい料理を作ること”が業務になる訳です。ここで考えてみたいのは、おいしい料理をつくるためには、さらに細かく“日常継続して行うこと” =“業務”があるのではないかということです。食材をただオーブンに入れるだけで、おいしい料理が出来ますか?
日々おいしい食材や調味料を仕入れること、ある程度お客さんの嗜好を把握して喜ばれるような調理法を選択すること、おいしく調理すること、おいしそうに盛り付けること、さらには使った道具を片づけること、包丁を研いだり鍋を磨いたりと調理器具の管理をすることなど、おいしい料理を作るために日常行っていること全てが業務に入ると思います。翻って介護実践現場で考えてみるとどうでしょうか。介護職員は“利用者の生活を支援すること”の専門家ですから、そのために日常継続して行うこと全てが業務になるはずです。禅問答のようになってしまいますが、それでは“生活”とはどういうことでしょうか。食事、入浴、排泄、睡眠だけで“生活”と言えるでしょうか。これらは生活の一要素であることは間違いありませんが、これだけでは“生活”とは言えませんよね。他者との関わりも生活の重要な要素の一つであるはずです。私が知る限りでは、「業務が忙しいから最近食事の配膳をしていない」とか、「業務が忙しいから、最近利用者に入浴してもらっていない」などという意見は聞いたことがありません。ただ、「業務が忙しいから、利用者と話す時間がない」という意見はしょっちゅう聞きます。
このように考えると、改めて「業務の範囲」や「生活とは何か」ということを考えてみることが大切ではないでしょうか。その上で、利用者と関わる時間を創りだす工夫が必要だと思います。1日が24時間であることは変えようがありませんから、あとはどう工夫するかです。さながら、過日大騒ぎとなった民主党の事業仕訳のようですね。かつて私が勤務していた施設では、シーツ交換の時間を短縮しよう!ということで、ワンタッチシーツを導入しました。これを導入したことにより、シーツ交換の時間が1ベッドあたり数十秒短縮出来、施設全体で考えると数十分短縮することが出来ました。
また、食事の際にほとんどの利用者が「食べこぼし対策のエプロン」を使用していたのですが、食事時の姿勢の見直しを徹底したことにより、大半の利用者がエプロン不要になりました。これにより、エプロンを配る時間、回収する時間、洗う時間、干す時間、たたむ時間を短縮することが出来ました。
これらはほんの一例ですが、利用者と関わることは重要な業務の一つであるということをしっかりと認識したうえで、介護職員が知恵を出し合い、改めて時間を創出していく努力が求められると思います。もちろん、介護スタッフの絶対数が不足していることは認識しております。しかし、このようなプロセスを経なければ、たとえ人員を増やしたとしても、状況は変わっていかないと思います。今は大変な時期ですが、行動し、結果を出しながら、介護職員の待遇改善(人員面も含めて)を要求していくことが、介護職員の職場環境改善への一番の近道だと思います。
COLUMN
介護走り書き(連載8回目)