COLUMN

介護走り書き(連載9回目)

 これまでこのコラムでは、私自身が介護職員として経験してきたことや、その後の研究で分かったことなどについて少しずつ紹介してきました。介護や福祉に関心がある方だけでなく、いろいろな方に読んでもらえたら、とても嬉しく思います。

そういうわけで今回は、これまでとは少し違う内容で書いてみたいと思います。

 先日、出張で山口県に行くために、浜松町から羽田空港行きのモノレールに乗りました。ぼんやりと車窓の景色を眺めていたら、突然、十数年前の“ある記憶”が鮮明によみがえってきました。

 十数年前、私は約8年間のお笑い芸人生活を引退し、日雇いのアルバイトをしていました。毎日夕方になると、公衆電話から派遣会社に電話をし、「明日、仕事はありますか?」と問い合わせます。公衆電話というところが、時代を感じさせますよね~(笑)。運良く仕事があれば、「明日の○時に、どこそこに行ってくれ」と言われ、仕事がなければ、「残念だけど、明日また電話してきて」と言われます。人材マーケット用語を使えば、いわば、“超スペシャルウルトラ買い手市場”ですね(笑)。そんな状態ですから、仕事があれば、その内容に関わらず、どこへでも行きました。当然、仕事には当たりはずれがあり、比較的ラクな仕事もあれば、ムチャクチャきつい仕事もあります。

ある日は、「誰にでも出来る簡単な花の仕分け作業。夜勤手当あり」という仕事でした。これは大当たりのラクな仕事だ!と思い、その日の夕方、いい気になって現場に行きました。行ってみると、そこは大きな市場のようなところで、段ボール箱が山のように積み上げられていました。しばらく待っていると親方が現れて、「よーし、じゃあこれから、この箱をあっちまで運んで、トラックにどんどん積んでいってくれ!箱に花の種類と行き先が書いてあるから、それぞれ指定のトラックに積んでくれ!」と叫びました。なんと、その段ボール箱の中身が花だというのですが、花は花でも、“たっぷりと土がついた”花だったのです(笑)。私は夕方から翌朝まで、何度も「逃げ出したい」という気持ちと葛藤しながら、その重い段ボール箱を運び続けました。確かに“簡単な花の仕分け作業” には違いありませんが、たっぷりと土がついたまま段ボール箱に詰めてあるのですから、それは“花の仕分け”というより、“重い荷物運び”ですよね(笑)。

また、ある日は、「簡単なプラスチック材料の選別」という仕事がありました。私は勝手に、「エアコンの効いた部屋で、テーブルの上に置かれた大小様々なプラスチックの部品を、似たような形ごとに選別していく仕事」を想像して、現場に行きました。ところが、行ってみてビックリです。そこには、屈強な大男たちが大勢いて、全員が毒ガス対策用の大きなマスクを着けていたのです。大男のひとりが、何も知らずに丸腰で現れた私を見て、「お前、マスク持ってこなかったのか?」と聞きました。私が「はい」と答えると、ものすごく気の毒そうな目で私を見つめ、「そうか…。まあ頑張れ」と一言(笑)。定刻になり、いざ仕事が始まりました。1階と2階が吹き抜けのようになった工場で、天井からドラム缶が逆さ吊りになっています。私たちはまず2階に上がり、大きなハンマーで、そのドラム缶を叩きまくります。すると、その中に入っている、ドロドロの廃油のようなものが、ドラム缶から下に落ちていきます。1階では、機械がその廃油のようなものを受け止め、一定間隔でガガーッという音をたてて動き、最終的には真っ白い粉のようなものが噴き出してきます。私たちは、今度は2階から1階に降りて、その噴き出し口で大きな袋をもって待ち構え、勢いよく噴き出してくる白い粉を袋に詰め、60kgずつ量って指定の場所に運んでいきます。60kgですよ!(笑)。その白い粉がどうやら“プラスチック材料”だったらしいのですが、結局やっていることは、粉だらけになりながら、60kgの袋を運んでいるのです(笑)。思い出しただけでイヤな汗が出てくるような、過酷な労働でした。

そんなある日のことです。「朝7時に田端駅前に集合」とだけ告げられた仕事がありました。集合場所に行くと、まるで南極観測隊が着るような防寒用のジャンパーと、安全靴が全員に配られました。もちろん新品ではありませんので、汚れているうえに多少臭いもあり、正直なところ、すごくイヤでした(笑)。そして、5~6人ずつワゴン車に乗せられ、連れていかれた場所こそが…そう、羽田空港の近くでした。おおーっと、ようやく冒頭の話しにつながったところで制限字数に(笑)!←いつものパターン。
 では、この続きは来月のお楽しみに!!
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